祖父譲りの確かな轆轤技術に斬新なデザインが映える

祐希氏の丁寧な仕事ぶりがうかがえる本作品。
鉄分を多く含む天目釉の地肌に、美しく、
しかし自由にデザインされた銀釉でのドリッピング文様。
「天目」という言葉は、茶の湯文化と深く結びついた意味合いを持っているが、
本作品はまさに茶の湯に通じる品格をも感じられる逸品。飾り皿としても美しい。

受け継がれる「名陶無雑」の精神　～祖父・井上萬二から孫へ～

人間国宝・井上萬二を祖父に、そして父もまた陶芸家であった井上祐希氏。現在井上萬二窯の三代目当主である。
二代目でもあった父・康徳を2020年62歳の若さで亡くした。
本来ならその父の背中を見つつ作陶に修練を積むところであったろうが、その時間が突如失われた。
祐希氏にはかなりのプレッシャーがあったに違いない。偉大なる祖父とそのあとを継ぐべくも志半ばで世を去った父。
二人の存在を背負った祐希氏は、しかしその重責に屈することなくお家芸である白磁の美しさを意識しつつ
釉滴などを駆使し独自の作風を生みだしている。

有田を代表する窯元のサラブレットとして、現在最も注目を浴びているアーティストのひとり。
伝統の中にも遊び心あふれる作品を制作する次世代を担う期待の陶芸家である。

※2025年7月 祖父の萬二氏も逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。

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  作陶中の祐希氏

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  轆轤を回す祐希氏

  「轆轤の名手」と称される祖父・萬二氏から教えを受けた祐希氏。轆轤の技術は確かだ。

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  井上萬二窯の様子

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  井上萬二窯展示室入口

ファッションブランドとのコラボレーションも積極的に行う、今注目のネオ陶芸アーティスト

祐希氏の作品の魅力的な技法のひとつに「釉滴」がある。
絵画の技法にもある「ドリッピング」と同様、たっぷりと釉薬を含ませた筆を軽やかに自由に、
その飛沫を散らして文様を描いていく。
この躍動感あふれるデザインは、計算されているようで偶発的、一つとして同じものはない。

轆轤形成されたきっちりとしたフォルムに動きのある景色は「伝統」と「革新」が融合した作品で、
「轆轤の名手」と称され、「好奇心、探究心」を忘れなかった祖父・萬二のDNAを感じずにはいられない。

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  伝統とモダンデザイン融合した祐希氏の作品（イメージ）

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  美しい文様の釉滴作品（イメージ）

  筆を使い、リズムを刻むように滴の文様を描く

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  絵画のような釉滴文様（イメージ）