日常的なモチーフをこの上ない緻密さで描く
タイトルにあるようにこの作品の主役はレモン。
無造作に剥かれた皮と造形的にきれいにカットされた果肉部分。唾液が出てきそうなくらい瑞々しく描かれている。
この“皮が剥かれたレモン”を描く表現方法は「ヴァニタス絵画」といわれ16世紀から17世紀のヨーロッパ北部で
多く描かれていたもので一つのジャンルとして確立されていた。
「人生の虚しさや儚さ、虚栄の無意味さ」を寓意的に表す絵画として主に静物画が描かれた。
この作品を制作した時の作家の心情は窺い知れないが、しかし少なくとも何かを伝えたかったことには間違いない。
レモン以外の果物に目を移してみると気づくことがある。
ブドウ、イチジクそしてひと粒のサクランボ、それらすべてが赤系と緑系の2色だけで描かれている。
サクランボさえもレモンの皮の黄色を誇張的に反射させ非現実的な緑色に塗っている。
よほど「主役」のレモンを引き立たせたかったのだろう。
皮が向かれたレモンは、「見た目は美しく香りも爽やかで魅力的、しかし味わうとすっぱい(苦い)」ということを表している。
そこではまさに「人生の側面」を寓意している。
作家自身がその境地にいたのか、あるいは観るものに何か警鐘を鳴らしているのかはわからないが、
「人生には楽しいことだけではない。辛いことも苦しいこともある」ということを、
ほかの果物の色を押さえてまでも、主役のレモンを通して伝えたかったのだろう。

作品制作中の庄司氏(アトリエにて)

作品が納められる金色の木製ボックス額(イメージ)
日本でも大人気の写実作品
19世紀ヨーロッパの文学と美術において盛んになった芸術様式である写実主義。目の前にある物質を模倣し、その様子を正確に作品に反映する芸術の考え方である。芸術を見たときに「描かれた対象に近ければ近いほど優れている」という考え方が根底にある。(もちろん評価の基準はほかにもいろいろあるが)
日本でも2000年に入って以降この写実絵画が注目されるようになり、現在では“スーパーリアリズム”ともいわれ、大変な人気となっている。
個展を開くと購入権を抽選で選ぶほどの超人気作家もいるほどだ。
商品情報
- 品番1
- 0002-7547G

- 庄司 守
- 1947年 岩手県宮古市に生まれる。
1980年 東京セントラル油絵大賞展入選。
1982年 ブロ-ドウェイ新人賞展第3席受賞。
1992年 現代絵画TOKYO展出品。
今日まで全国有名デパートはじめギャラリーで意欲的に個展を開催
ユーザーレビュー
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