2022.07.14

事前準備が大切…海外に薬を持っていく際に気を付けること

日常的に薬を服用されている方は、海外旅行や出張の際には日数分の薬を持っていくことになります。また、普段は薬を飲んでいない方も、慣れない土地での急な体調不良などを考慮すると、鎮痛剤や整腸剤といった常備薬を持っていくと安心です。 海外に薬を持っていくにあたっては、制限がある場合や注意が必要なケースもあります。今回は、海外に薬を持っていく際の注意点などをご紹介します。(2019.3.8初稿掲載・2022.7.14更新)

渡航前に知っておきたい、“おくすり”の持っていき方

本人が使用する医薬品は、基本的に機内持ち込みOK

そもそも、海外や飛行機内に薬って持ち込めるの?空港の手荷物検査や税関で止められてしまうのでは?と不安に思われている方もいらっしゃるでしょう。もしもの時に備えて持っていく市販の常備薬も、病気などの治療中で服用している処方薬も、医薬品の持ち込みは認められています。ただし、一部の薬には条件があるものもあります。以下、市販の常備薬と、医師から処方される処方薬とに分けて説明します。

まずは、念のために持っていく市販の常備薬についてです。その主な例としては、頭痛薬(解熱鎮痛剤)、風邪薬、胃腸薬、整腸薬、下痢止め、便秘薬、酔い止め、目薬、虫刺され・かゆみ止め薬(塗り薬)、消毒液 などが挙げられます。

渡航する国/地域や個人の状況などによって、どの薬を持っていくかは異なるでしょうが、具合が悪くなった時に、現地で薬を調達するのは容易ではありません。また、同じ症状の薬でも、日本で売られている薬の成分と異なる成分が用いられている場合もあります。飲み慣れている常備薬を、市販薬のパッケージごと付属の服用・使用説明書も一緒に持っていくのがおすすめです。これは、薬の成分が分からないと渡航先に持ち込めない可能性があるためです。また、機内で突然体調を崩して薬が必要になるケースも考えられます。必要になる可能性のある薬はスーツケースなどの預け手荷物ではなく、機内の持ち込み荷物に入れておきましょう。



<特に液体の医薬品には注意!>

目薬、虫刺され・かゆみ止め薬(塗り薬)、消毒液のほか、液状感冒薬(ドリンクタイプの風邪薬)など、市販の医薬品の中には、液体(ジェル状・ゾル状含む)のものもあります。
国際線では、液体の機内持ち込みに際して、『100mlまたは100gの容量以下の容器に入っており、それらすべてを容量1リットル以下の再封可能な透明プラスチック袋に収納しなければならない』という規定がありますが、医薬品は例外として扱われます。上記規定の対象外ですが、空港の保安検査場で「医薬品」であることを保安員に伝える必要があります(「医薬部外品」と記載されている製品は医薬品ではありません)。

ただし、航空会社や保安員によっては(特に海外)、医師の診断書や処方箋、薬の説明書や成分表などの提示を求める場合があります。不安であれば、上記規定に沿ったパッケージ方法で収納して機内に持ち込むか、スーツケースなどに入れて預けましょう。


<粉薬はできるだけ他の剤形に>

粉薬を所持していると、海外では違法薬物の疑いを掛けられる恐れがあります。

もし、粉薬を服用している場合には、同じ成分や同様の効果がある他の剤形の医薬品に変更できないか、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。あらぬ疑いを掛けられたり余計なトラブルに巻き込まれたりしないためにも、事前に準備しておくことが大切です。


服用中の処方薬は、念のため英文の薬剤証明書があるとスムーズ

持病などで日常的に薬の服用や投与が必要な方は、念のため英文の「薬剤証明書」を主治医や薬剤師に書いてもらっておくと安心です。薬剤証明書は、患者の氏名や疾患名のほか、薬剤の製品名および一般名、剤形、含有量、数量、処方医の署名などが記載されたものです。公的な形式の規定はありません。

なお、主治医に薬剤証明書を書いてもらえない場合、最寄りの日本旅行医学会認定医に依頼すれば書いてもらえます。


向精神薬や医療用麻薬は、別途手続きが必要なことも

主に精神疾患の治療に用いられることが多い向精神薬は、あくまでも自身の治療のために自分が携帯して出入国する場合に限り、持っていくことが認められています。向精神薬の総量が一定量を超えなければ、特別な手続きは不要ですが、トラブル防止のために処方箋のコピーや医師の証明書などがあるとよいでしょう(一定量を超える場合は証明書類が必要)。

がんの疼痛緩和などの目的で使用される医療用麻薬は、事前に居住地域の管轄である地方厚生(支)局長から許可を得ておくことで、海外へ持っていくことが可能です。詳しくは、各地方厚生局で確認しましょう。


インシュリンなどの注射剤や液体の薬は、機内持ち込み制限の対象外

糖尿病の治療で使用されるインシュリンの注射液など、機内で服用・投与を必要とする液体の医薬品については、機内持ち込み制限の対象となる一般的な液体物には該当しません。喘息の方が使用する、液状の薬剤を噴霧して吸引するような装置(ボンベなど)も同様で、機内で使用する適正な量に限り、客室に持ち込めます。自己注射器(針)については、保安検査の際にその旨を伝えてください。

国内の空港では、事前申告や医師の診断書の提示は、基本的には不要です。しかし、海外空港の保安検査場では処方箋のコピーや診断書などの提示が求められることがありますので、念のため英文で書かれたものを一緒に携行しておくとトラブルを防げます。


国によって制限や基準が異なる場合もあるので確認を

日本から海外へ持っていく医薬品について、英文での証明書類の有無にかかわらず、国によっては薬に含まれる成分や含有量などにより持ち込みが禁じられているケースもあります。事前に渡航先の駐日外国公館に確認することをおすすめします。

また、書類発行の手続きや確認などで、意外と時間がかかることがあります。海外へ行くことが決まったら、持病などで日常的な薬の服用・投与を行っている方は、早目に必要な手続きを取っておくと安心です。


なお、薬の量が旅程に対してあまりにも多過ぎると、トラブルが発生しかねません。渡航先の基準に沿った成分の薬を、必要かつ適正な分量だけ持っていくようにしましょう。

また、所持している薬について、海外の空港で質問されることもあり得ます。スムーズな対応ができるよう、必要な英語を覚えておくと安心です。


新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、空港内の各所にアルコール消毒液や検温機器の設置が予想されます。マスクの着用ルールなども含め、事前に渡航する国/地域の状況を確認して、快適な旅をお楽しみください。


※紹介した内容は、記事作成時点(2022年7月)のものです。機内持ち込みや預け荷物の制限については、随時変更が加えられます。ご利用の航空会社や国土交通省、厚生労働省からの情報を確認することをおすすめします。