おせち

2024.04.30

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喪中でもおせちは食べられる? 食べてもよい食材や注意点

家族や親族が亡くなった際に、一定期間喪に服すのが日本の一般的な風習です。
喪に服す期間のことを『喪中』といい、この期間中はお祝い事・慶事を避けたほうがよいとされています。

喪中にお祝いのあいさつや年賀状などを避けることはよく知られていますが、新年に食べるのが恒例となっているおせちを食べてもよいのかどうか、気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、喪中におけるおせちや避けるべき食材などについて解説します。

なお、おせちについての詳細は、こちらのページで解説しています。

喪中におせちは食べてもいい?

日本には、年を越して新年を迎えた際に、お祝いとしておせちを食べる風習があります。

一方、喪中にはお祝い事や派手な行事を控えるべきという風習や考え方があるため、おせちや正月のお祝いなどは避けるほうがよいとされています。
新年のあいさつに「おめでとうございます」という言葉の使用や、年賀状の差し出しを控えるといったことがマナーであることを知っている方も多いはずです。おめでたい食材を多く使用し、新年を祝う意味を持つおせち料理も同様に、喪中である期間には食べないほうがよいと考えられています。

ただし、信仰や宗派によっては、死者や喪中に対する考え方に違いがあったり、喪中自体が存在しなかったりする場合もあります。
そのような場合には、親族が亡くなってから初めて迎える正月であっても、おせち料理を食べることに問題はありません。

喪中におせちを避ける理由

喪中は故人を偲び、身を慎む期間であるとして、お祝い事や慶事を控える習慣があります。
正月のお祝いとして食べられるおせちは、縁起がよいとされる食材を使用して作られており、おせちそのものや使用する食材自体がお祝い事であると考えられています。

信仰や宗派によっては、喪中にはお祝いの意味を持つおせちを控えたほうがよいとされています。
特に、故人がなくなってから四十九日法要が執り行われるまでの期間に当たる忌中は、おせちを控えるべきという考えが根強いです。

ここからは、おせちが持つ意味や、信仰や宗派によってどのような違いがあるのかを解説します。

おせちが持つ意味

おせちの起源については諸説ありますが、もともとは神様へ豊穣の感謝をこめて、採れた食材をお供えする儀式である『御節供(おせちく)』が由来とされています。

御節供は、元日(1月1日)や桃の節句(3月3日)など5つの節目『五節句(ごせちく・ごせっく)』に行う宮中行事でした。
江戸時代には、五節句の中で特に重要とされる正月の御節供がおせちと呼ばれるようになり、庶民へ広がったといわれています。

季節の節目をお祝いする習慣であった御節供の名残から、おせちにはお祝い事という側面が強く残されています。

信仰や宗派による違い

喪中でのおせちに対する考え方は、信仰や宗派によって異なります。

死を『穢れ(けがれ)』とする神道や、『輪廻転生(りんねてんせい)』という考えがある浄土真宗以外の仏教では、喪中にお祝い事や派手な行事を慎む教えがあります。
これに伴い、喪中にお祝い事や縁起物とされるおせちを食べないほうがよいと考えられています。

一方で、浄土真宗やキリスト教などには別の考えや教えがあり、喪中や忌中という考え方自体が存在しない場合もあります。
そのため、「おせちを食べることは問題ない」としている信仰や宗教もあります。

喪中におせちを食べるときの注意点

喪中におせちを食べることは、「避けたほうが無難」とされているケースが一般的ですが、忌中を避ければ食べても問題ないという考えもあります。
ただし、喪中におせちを食べるのであれば、食材やしきたりに配慮してお祝いの意味を強く持たせないよう、気を付ける必要があります。

おせちを家庭で一から作るのではなく、すでに通販や百貨店などで注文してしまっている場合、食材に配慮するのは難しいかもしれません。
そういった場合でも、いくつかの注意点に気を付ければ食べても問題ありません。

ここからは、喪中に食べるおせちで避けたほうがよいとされる食材や、さまざまなしきたりについて解説します。

1.縁起物の食材を避ける

おせちは基本的に、縁起物やお祝いの意味を持つ食材で作られています。
喪中には避けたほうがよいとされる食材が含まれていることもあるため、注意が必要です。

喪中に避けたほうがよい食材の例

避けたほうがよい食材 理由
紅白の食材 お祝いの意味を持つ色の組み合わせだから
鯛や昆布 「めでたい」や「よろこぶ」との語呂合わせで縁起がよいとされるから
伊勢海老 喪中では、長寿と関連する意味を持つものは避けるべきと考えられるから

おせちの中身について、こちらのページで詳しく解説しています。

2.食材の切り方に注意する

食材そのものだけでなく、食材の切り方や飾り方にも注意が必要です。
食材の切り方や飾り方には、何らかの意味がこめられることもあります。
縁起物の食材を避けるのと同様に、縁起を担ぐ切り方、飾り方を避けましょう。

喪中に避けるべき食材の切り方や飾り方の例

  • 「めでたい」松竹梅をかたどる飾り包丁
  • 「つながり」を表す結びこんにゃく
  • 「長寿」を表す菊の形をしたもの など

3.重箱や金箔を使用しない

おせちは『重箱』に入れるのが一般的です。
重ねて利用することから、重箱には「おめでたいことが重なるように」という意味がこめられています。
喪中はおめでたいことやお祝い事を避ける時期のため、重箱の利用はふさわしくないとされています。重箱を使用しないことで、「悲しいことが重ならないように」との願いをこめましょう。

『金』はおめでたいことの象徴とされる色です。
豪華でおめでたい印象を与える金箔や金色の飾りは、喪中のおせちにはふさわしくないとされます。

ほかにも、祝箸のようにおめでたい意味を持つアイテムの使用は避けるのが好ましいといえます。

4.お酒を飲む場合は夜のみ

元旦に飲む『御屠蘇(おとそ)』は、縁起がよい祝い酒と考えられているため、喪中期間に飲むのは避けましょう。
一方で、お酒はお祝いの意味と同時に、邪気を払う意味も持っています。
夜に飲むことで、邪気払いの意味を強調することになるため、日没後であればお酒を飲んでも問題ありません。

おせち料理の代わりに食べてもよい年末年始の料理

喪中は縁起のよい食材やお祝いの料理を避ける必要がありますが、おせち料理以外の年末年始に食べる料理は、喪中に食べても問題ないのでしょうか。

喪中に避けるべきなのはおめでたいことやお祝い事です。
そのため、お祝いの意味合いがなければ喪中であっても正月の料理を食べて問題ないとされています。

ここからは、喪中に食べても問題ないとされる料理をいくつか紹介します。

ふせち料理

『ふせち料理』は喪中の方がおせち料理の代わりに食べられるように工夫された料理です。
精進料理をベースに作られており、お祝いを連想させる食材を使用せずに作るため、喪中でも食べられます。

ふせち料理という名前は、御節(おせち)の『御』を不祝儀の『不』に変えて、『ふせち』とした説があります。

お雑煮

お雑煮は、もともとお祝い事や記念日などに食べるものでしたが、現在ではお祝い事以外にも食べる一般的な料理とされています。
正月に食べることが多いものの、料理自体にお祝いとしての意味はないため、喪中であっても食べることに問題はありません。

ただし、お雑煮の具として用いられることもある紅白かまぼこや昆布などは、食材自体にめでたい意味合いがあるため、避けるのが好ましいです。

年越しそば

年越しそばの由来には諸説ありますが、細く長く伸びることから「長いものを食べて健康長寿を願う」といった意味があります。
また、切れやすいことから「1年の厄を切り落とす」といった意味もこめられています。

おせちと同じく年末年始の風物詩といえる料理ですが、年越しそばにはお祝いの意味合いは含まれていないため、喪中に食べても問題ありません。

喪中の正月はおせち料理以外の選択肢も考えよう

喪中に年を越して正月を迎える場合、めでたい意味合いを持つおせち料理を食べるのは控えたほうがよいとされています。

ただし、宗教や宗派などによって考え方の違いがあるため、「絶対に食べてはいけない」というわけではありません。
縁起のよい食材やおめでたい意味を持つ食材・食器を避ければ、食べても問題ないという考え方もあります。

今回ご紹介したように、お雑煮や年越しそばであれば食べても問題ありませんし、喪中の際におせちの代わりとして食べられるふせち料理もあります。
このように、おせち以外に喪中の方が食べてもよい料理は複数あります。喪中で正月を迎える方は、家族で話し合って決めてみてはいかがでしょうか。