おせち

2024.04.30

  • facebook
  • instagram
  • LINE

おせちとは? 料理の中身や基本知識を徹底解説

お正月の料理として古くから伝わるおせち。
日本では、新年に食べると縁起のよい料理として親しまれています。

しかし、「なぜおせちを食べるのか分からない」「おせちの歴史について知らない」という方も多いのではないでしょうか。

おせちには深い歴史があり、一つひとつの料理には1年の幸せを願う意味がこめられています。
この記事では、おせちを食べる理由や料理の意味など、基本知識を解説します。

おせちとは

おせちは漢字で『御節』と書き、季節の節目に当たる『節』の日を指します。
従来、節の日には、神様へ豊作を祈願してお供え物をしていました。
これを『御節供(おせちく)』といい、おせちの由来の一つといわれています。そのため、おせちには「神様へのお供え物」という意味も含まれています。

節の日は1年間に何回かありますが、最も重要な季節の節目が『お正月』です。
そのお正月の料理が現在のおせち料理として親しまれるようになりました。

また、おせち料理を来客に振る舞うといったおもてなし自体をおせち、おせち振る舞いと呼ぶ場合もあります。

おせちを食べる意味や理由

新年におせちを食べることは、神様をお迎えして、神様への感謝とともに1年間の家内安全や無病息災、家業繁栄、学業成就、子孫繁栄などを願う意味があります。

古くから、新年は神様をお供え物でおもてなしをして、神様と同じお供え物を食べることで自分たちにも強い力が宿るという考えがありました。
これが「おせちを食べることは縁起がよい」といわれる理由の一つです。

また、三が日の間は神様をお迎えしているため、炊事をしないという風習があります。
年末に日持ちのするおせち料理を作り、三が日は炊事をせずにその料理を食べることが望ましいといわれています。

おせちの意味については、こちらのページで解説しています。

おせちはいつ食べる?

おせちを食べる日は1月1日だと考えるのが一般的です。

一方で、北海道や東北、甲信越の一部地域では大晦日におせちを食べるところもあります。
これは、日没から1日が始まるという旧暦の考え方が理由の一つです。
12月31日の夜から新年であるという考えになるため、おせちを食べる日が地域によって異なる場合があります。

おせちを食べる日として一般的であるのは1月1日ですが、「この日に食べなければならない」という決まりはありません。
大晦日でもお正月でも、自分の育ってきた環境や習慣にならっておせちを楽しみましょう。ただし、おせちを作るのは年末に済ませておくのが望ましいです。

おせちをいつ食べるかについては、こちらのページで解説しています。

おせちの歴史

弥生時代に中国から伝来した暦(太陰太陽暦)には、1年の節目となる日にお供えをして神様に豊作や健康を願う御節供という風習がありました。
これがおせちの起源といわれています。

その後、奈良時代から平安時代に御節供で料理を食べることが定着し、平安時代の朝廷では季節の変わり目ごとに『五節会(ごせちえ)』という行事を催していました。
この行事で特別な料理を用意する習慣が始まりました。

江戸時代には五節会の文化が庶民にも広まり、最も重要な節目であるお正月に食べる料理をおせちと呼ぶようになったといわれます。

明治時代からおせちに重箱が使用され始め、これが世に広まり、現在のおせち料理の形となりました。

おせちに重箱を使う理由と詰め方

重箱(お重)は、お祝いの日の料理を入れるための箱です。
一般的に、重箱は二段から五段程度に積み重ね、最上段に蓋をする形式になっています。

おせちを重箱に詰める理由として、以下が挙げられます。

  • 「福が重なる」という縁起をかつぐ
  • 数多くの料理を詰められる
  • お正月の三が日に炊事を休めるように食材を保存できる

おせちに使われる重箱は五段が基本とされています。
地域や家庭によって使われる重箱の段数に違いはありますが、古くから縁起がよいとされる奇数の段にするのが一般的です。
近年は核家族化の傾向があり、おせち料理の量によっては三段にする家庭もあります。

ここでは、重箱の詰め方とその中身や意味を紹介します。

五段の重箱の場合

お重は上から『一の重』『二の重』『三の重』『与(四)の重』『五の重』と数え、それぞれのお重で詰めるべき料理が決まっています。

五段の重箱に詰めるときの例

段数 お重の中身 お重にこめられた意味
一の重 祝い肴(いわいざかな) 勤勉、健康、子孫繁栄、家内安全、五穀豊穣、家業繁栄
二の重 口取り、酢の物 不老長寿、学業成就、財産・金運向上
三の重 焼き物(海の幸) 立身出世、夫婦円満
与の重 煮物(山の幸) 無病息災、家運向上、良縁
五の重 空箱(『控えの重』といわれる) 「神様からの福をいただく」という意味で空箱を用意する

三段の重箱の場合

近年ではコンパクトにするために重箱の数を減らして、三段の重箱にする家庭も多くなっています。

三段の重箱に詰めるときの例

段数 お重の中身 お重にこめられた意味
一の重 祝い肴、口取り 勤勉、健康、不老長寿、子孫繁栄、家内安全、五穀豊穣、家業繁栄、学業成就、財産・金運の向上
二の重 焼き物、酢の物 立身出世、健康長寿、夫婦円満
三の重 煮物 子孫繁栄、無病息災、家運向上、良縁

おせちの食材にこめられた意味や由来

一般的に、おせちには20~30種類の料理が入っています。
料理の品数は、昔から縁起がよいとされる奇数にするのが好ましいです。
縁起がよいといわれる食材が選ばれており、一つひとつの料理に意味がこめられています。

おせち料理は次の5種類に分けることができます。

  • 祝い肴
  • 口取り
  • 酢の物
  • 焼き物
  • 煮物

おせちの中身については、こちらのページで解説しています。

祝い肴

祝い肴とはお祝いの場でお酒の肴(おつまみ)として用意される料理です。
祝い肴には以下の料理があります。

祝い肴の代表的な料理

料理名 料理にこめられた意味 理由や背景
数の子 子孫繁栄 ニシンの魚卵である数の子は卵の数が多いことから子宝に恵まれること祈願する
黒豆 勤勉と健康 黒は「邪悪なものをよける」といわれ、豆は「マメに働いて暮らす」という意味がある
田作り※1 五穀豊穣(豊作) 食材として用いられるイワシは田んぼの肥料として用いられていたことから豊作を願う意味がこめられている
たたきごぼう※2 家族や家業の繁栄 ごぼうは地に根を張って育つことから、家族や家業が根付いて繁栄することを祈る

※1・・・田作りとは、カタクチイワシの稚魚を乾燥させたものを炒め、醤油で味付けした料理のこと。
※2・・・たたきごぼうとは、細かく刻んだごぼうをたたいて柔らかくしてから味付けした料理のこと。

また、祝い肴は『祝い肴三種』と呼ばれ、関東と関西では祝い肴三種の組み合わせが異なります。

関東・関西の祝い肴三種

地域 祝い肴三種となる料理
関東 数の子、黒豆、田作り
関西 数の子、黒豆、たたきごぼう

口取り

口取りは祝い肴と同様に、お酒のつまみとして用いられる料理です。
祝い肴に比べて淡く甘めの味付けです。
口取りには以下のような料理があります。

口取りの代表的な料理

料理名 料理にこめられた意味 理由や背景
紅白かまぼこ お祝い、魔除け、清浄 かまぼこの半月形が新年を祝う初日の出を連想させる紅白の紅は『魔除け』、白は『清浄』を表す
伊達巻 学業成就 形が巻物に見えることから書物を連想させる
錦卵 金運向上 卵の黄色と白色が金と銀の色鮮やかな絹織物(錦)を表す
栗きんとん 金運向上、商売繁盛 きんとんは漢字で『金団』と書くことから、金運向上や商売繁盛の意味がある
昆布巻き 不老長寿、子孫繁栄 『養老昆布』という文字合わせから、健康を祈願する意味がある
数の子 子孫繁栄 ニシンの魚卵である数の子は卵の数が多いことから子宝に恵まれること祈願する

酢の物

おせちの酢の物とは酢漬け料理のことで、箸休めとしての役割もあります。
酢の物には次のような料理があります。

酢の物の代表的な料理

料理名 料理にこめられた意味 理由や背景
紅白なます お祝い 色合いがお祝いを意味する水引の紅白を連想させるため、縁起がよいとされている
酢レンコン 明るい見通し レンコンの穴から将来の見通しが明るくなるようにという願いがこめられている
ちょろぎ※3 不老長寿 漢字で「長老喜」「長老木」と書けることから長寿への願いがこめられている

※3・・・ちょろぎとは、巻貝のような形状を特徴としたシソ科の植物のこと。

焼き物

おせちの焼き物は、文字通り食材を炭火で焼いた料理のことです。
食材には縁起のよい海の幸が使われます。主な焼き物を以下に紹介します。

焼き物の代表的な料理

料理名 料理にこめられた意味 理由や背景
鯛(タイ) お祝い 「めでたい」という語呂合わせや、恵比寿様が持つ魚として縁起がよいとされている
鰤(ブリ) 出世 成長とともに名前が変化する『出世魚』とされ、立身出世を願う
海老(エビ) 長寿 焼いて腰が曲がったように見える見た目から長寿を連想させる
脱皮を繰り返して成長することから『成長』『発展』も意味する
貝類 不老長寿、夫婦円満 寿命が長い鮑(アワビ)や、貝殻が対になっている蛤(ハマグリ)から不老長寿や夫婦円満を意味する

煮物

おせちの煮物では、山の幸を使った煮物が一般的に使われます。
煮物には以下の料理があります。

煮物の代表的な料理

料理名 料理にこめられた意味 理由や背景
筑前煮 家庭円満 具材を同じ鍋で煮るため、家族が仲良く暮らすという意味がこめられている
里芋 子孫繁栄 種芋から多くの子芋が付くことから、子宝に恵まれることを願う意味がある
くわい お祝い 芽が飛び出た見た目から、「芽出たい(めでたい)」と連想される
こんにゃく 夫婦円満、良縁 ねじれた手綱の形に結ぶことから、縁を結ぶという願いがこめられている
たけのこ 出世、幸運 たけのこの成長する様子から、「幸運を伸ばす」という意味がある

おせちにふわさしくない料理

「神様へのお供え物としてふさわしくない」として、おせちに用いないほうがよいとされる料理があります。

おせちにふさわしくない料理と理由

おせちにふさわしくない料理 理由
牛や豚など四足動物を使った料理 殺生すべきではないから
火を使う料理 火の神を怒らせないように
包丁を使う料理 包丁で食材を切る様子が「縁を切る」につながるから
鍋料理 鍋料理に出る灰汁(あく)が悪に通じるから

おせちに使う祝い箸

おせちは『祝い箸』で食べるのが一般的です。
祝い箸は丸みを帯び、角がなく、箸の両端が細くなった形状をしています。
片方を神様、もう一方を人が使って料理を食べる『神人共食』がより行いやすくなるという意味がこめられています。

また、祝い箸の長さは、八寸に相当する24cmです。
末広がりの八が縁起がよいことからこの長さになったとされています。
祝い箸の素材には柳といった白木が使われます。市販品では『寿』の金文字が入った紅白の紙袋に入っているのが一般的です。

おせちが高級といわれる理由

おせち料理の値段の相場は、手作りか、購入か、食材の質や予算によっても異なります。
いずれにしても、新年の特別な料理であることから、値段が高くなる傾向があります。

おせちの値段が高くなる傾向にある理由として、以下が挙げられます。

おせち用の食材を使うから

ちょろぎやくわいなど、一般的におせち以外ではほとんど使われない食材があります。
また、通常と比べて、保存を効かせるために異なる作り方にすることや、質のよい食材をおせち料理に使うことで値段が高くなります。

昔から伝わる縁起物や高級な食材を使うから

それぞれの食材に縁起物の意味があるため代替品が使えません。
加えて、おせち料理には鯛や鮑など高級な食材が入っていることも理由の一つです。

調理工程で手間がかかるから

おせち料理は種類や品数が豊富であるだけではなく、手の込んだ料理が多く、丁寧に作ることが求められます。
市販のおせちになると特に、人件費や光熱費がかかります。

おせちの値段については、こちらのページで解説しています。

喪中のときはどうする?

喪中は、おめでたいことを意味する行いを避けるのが望ましいとされています。
そのため、新年をお祝いするおせち料理は控えるのが一般的です。

喪中でも新年を感じられる食事をしたい場合は、縁起がよいとされる料理やお重の使用を避けて、精進料理をベースとした料理を食べる方法があります。

喪中のおせちについては、こちらのページで解説しています。

新年に食べる食事の多様性

伝統的なおせちは今も受け継がれていますが、最近は定番のおせち以外の料理をお正月に食べることが増えてきています。
現代見られるおせちには、以下が挙げられます。

  • 伝統的なおせちに洋風の料理が加えられた和洋折衷のおせち
  • おしゃれなワンプレートに盛り付けられたおせち

世代を超えて家族みんなで楽しめるように、好みの料理をおせち料理に加えるのもおすすめです。

また、老舗旅館や料亭が作る冷凍おせちの通信販売が普及し、おせちを購入する家庭も増えています。
おせち料理を一緒に食べる方が少ない方のために、少人数用のおせちや一人用のおせちも販売されています。

日本では、おせち料理が定番ですが、新年に特別な料理を食べるのは日本だけではありません。
海外では新年に以下のような縁起物を食べる文化があります。

他国の新年に食べる料理

国名 新年に食べる料理
アメリカ 『ブラック・アイド・ピー』という肉と豆の煮込み料理(南部地域)
韓国 無病息災の意味をこめた『トック』というスープ
ロシア 『ペリメニ』という水餃子
イタリア 『ザンポーネ』という豚足の皮に肉を詰めた料理

冷凍おせちについては、こちらのページで解説しています。

おせち料理の意味を知って新年を祝おう

神様をへお供えする意味がこめられたおせち料理は、1年で最も重要な意味を持つ食事の一つといえます。

おせちを食べる理由には歴史とのつながりがあり、料理の一つひとつに意味がこめられています。
おせちに関する基礎知識を知ることで、それぞれの料理をより特別に思いながら食べられるのではないでしょうか。

古くから伝わるおせちの文化を大切にしながら、各家庭に合ったおせち料理で1年間の健康と幸せを願いましょう。